Theoretical Perspective

経済学について

学生時代からの素朴な疑問と、スラッファ理論・ケインズ経済学への鋭い視座。

初学時の違和感:限界効用と供給曲線への疑問

はじめて経済学を学んだのは、京都大学経済学部に入学してからでした。「経済原論」という講義で初歩的なミクロ経済学とマクロ経済学について解説が行われていましたが、ミクロ経済学は最初はまったく理解できませんでした。

みなさん、ミクロ経済学の「限界効用」や「限界代替率」「無差別曲線」って、本当に理解できましたか? 人間がそんなふうに商品の需要を決めているとは思えませんでした。 また、部分均衡論において需要曲線が右下がりになるのは分かっても、「供給曲線はなぜ右上がりになるのか?」という点にも強い違和感がありました。「たくさん生産したほうが安く作れる(規模の経済)のでは?」「需要があるなら作れるだけ作るのでは?」という疑問です。

大学の先生に聞いてみてほしい5つの本質的疑問

これらに明快に答えられたら、真に優秀な経済学者です。

  1. 人間は本当に限界代替率が相対価格と等しくなるように需要を決めているのか?
  2. 供給曲線はなぜ右上がりになるのか? それは現実にそうなっているのか?
  3. 部分均衡論のように、ひとつの市場を他の商品市場から切り離して分析できるのか?
  4. マクロ経済学は、ミクロ経済学とどのように整合的に関係しているのか?
  5. マクロ経済学の「乗数理論」を、ミクロ経済学からどのように説明するのか?

古典派とスラッファ理論との出会い

私にとって理解しやすかったのは、古典派の「商品の価格は原材料と賃金という費用の合計に利潤を加えて決まる」という常識的な考え方でした。マルクスの労働価値説には曖昧さ(鉛筆の労働価値の測定など)を感じていましたが、それを価格方程式として厳密にモデル化したのが、イタリア出身のピエロ・スラッファ(Piero Sraffa)でした。

スラッファは、マーシャルの部分均衡論を批判し、ひとつの市場を他に影響を与えずに切り離すことは不可能であることを見抜いていました。私は大学院において、このスラッファの体系を基礎に研究を進めました。

ケインズ経済学と金融緩和政策の限界

マクロ経済学においてケインズは政府支出による乗数効果を提唱し、実践的で明快でした。しかし近年の日本を見ると、乗数効果は著しく小さくなっています。政府支出を増やしても効果が薄い理由について、主流派は「将来への不安」といった曖昧な説明でお茶を濁しています。

さらに、貨幣市場(LM曲線)についても大きな疑問があります。アベノミクスや超低金利政策において、いくら利子率を下げても投資も消費も増えませんでした。論文執筆では細部を扱わざるを得ませんが、退職した現在、これら「乗数効果がなぜ小さくなったのか」「なぜ金融緩和が効かないのか」という根源的課題をじっくり考えていきたいと思っています。