高増教授の騙されない経済教室:日本の一人当たりGDP低下とアニマルスピリットの謎
公式YouTubeチャンネルにて、日本の経済停滞と世界経済の潮流をわかりやすく解説する連続講義を配信中。
1954年東京生まれ。京都大学大学院経済学研究科修了(経済学博士)。専門は理論経済学、国際経済学、スラッファ理論、アナリティカル・マルキシズム(分析的マルクス主義)。 関西大学副学長(2016-2020)などを歴任し、大学教育改革や遠隔教育の枠組み構築に尽力。
また、自ら大学内に本格的レコーディングスタジオを立ち上げ、インディーズレコード会社(OSU DMF)を経営した実務経験をもとに、日本初となる体系的な『ポピュラー音楽の社会経済学』を上梓。現在は退職後もYouTubeやブログを通じて、日本経済やポピュラー音楽の本質についての論考を精力的に発信しています。
公式YouTubeチャンネルにて、日本の経済停滞と世界経済の潮流をわかりやすく解説する連続講義を配信中。
K-Popの躍進や音楽サブスクリプション、AIによる音楽生成の影響など、最新動向を大幅に加筆した決定版テキスト。
マクロ経済政策の検証、ロックギターの音響分析、日中関係や現代社会の諸問題に関する私見を定期掲載。
理論経済学・国際経済学の厳密な数理モデル分析から、音楽スタジオ・レーベル経営の実務まで。 既存の枠にとらわれない独自の視点から学問と文化を追究しています。
1954年 東京都生まれ / 関西大学名誉教授
1954年東京生まれ。私立武蔵高校を経て、京都大学経済学部を卒業。京都大学大学院経済学研究科で博士号を取得しました。もともとの専門は、理論経済学、国際経済学で、スラッファ理論、アナリティカル・マルキシズムの研究では、国際的にも知られています。
博士論文である『ネオ・リカーディアンの貿易理論』(1991年)は、「自由貿易が必ず利益をもたらすのか」という命題を、国際経済学の基礎理論であるリカード比較生産費説やHOS理論について多部門モデルおよび生産に時間のかかるモデルを導入して厳密に検証したもので、これまで明らかにされなかった重要な視座を提供し、高い評価を獲得しました。
学生のころからロックミュージックが好きで、2000年に大阪産業大学にプロユースのレコーディング・スタジオを作ったことを契機に、デジタル・コンテンツと音楽CDの販売会社である「有限会社オーエスユー・デジタルメディア・ファクトリー(OSU DMF)」を学生とともに2001年に設立し、経営に携わりました。
学園祭や新入生歓迎会でのバンド演奏、ゼミ生とのミュージックビデオ制作、CD制作販売の実務を通じ、音楽産業が抱える構造的課題を痛感。この経験が、後に総合的学術書『ポピュラー音楽の社会経済学』(2013年)の執筆や、関西ベンチャー学会理事としての教育・研究へと結実しました。
大阪産業大学ではアジア経済の研究プロジェクトである「アジア共同体研究センター」を主導し、中国、韓国、ロシア、タイ、ベトナムなどで数々の国際シンポジウムを開催。2010〜2011年には上海交通大学、2014年には復旦大学で客員研究員を務め、講義と研究を行いました。
関西大学では2016年から2020年に副学長を務め、入試制度の刷新や学生スポーツ支援体制の強化を推進。新型コロナ感染拡大時には、培ってきた遠隔教育の知見を活かして学内オンライン教育体制の確立に尽力し、入学式オープニング映像や応援歌動画などの企画・撮影・編集も自ら担当しました。
学歴、取得学位、および主要な職歴のタイムラインです。
(理論経済学・経済史学専攻)
(理論経済学・経済史学専攻)
著書、査読付き学術論文、翻訳、学会報告などの研究実績一覧です。

単著、178ページ、創文社(京都大学経済学博士論文に基づく記念碑的著作)

高増明編(共著)、全体10章を執筆(349ページ)、ナカニシヤ出版

高増明・野口旭編(共編)、野口旭氏と二人で全体(343ページ)を執筆、ナカニシヤ出版

高増明・松井暁編(共編)、第1章・第2章・第3章(pp.3-65)を執筆、ナカニシヤ出版

in A New Construction of Ricardian Theory of International Values: Analytical and Historical Approach (eds. Y. Shiozawa, T. Oka, T. Tabuchi), Springer, pp.149-174.
The Manchester School, Vol. 54, Issue 2, June 1986, pp.202-207 (単著)
関西大学『社会学部紀要』第45巻第2号(2013)、第47巻第1号(2015)(単著)
奚 俊芳(上海交通大学)との共著、関西大学『社会学部紀要』第43巻第2号、pp.1-31
東洋経済新報社(堂目卓生、吉田雅明氏と共訳)
学生時代からの素朴な疑問と、スラッファ理論・ケインズ経済学への鋭い視座。
はじめて経済学を学んだのは、京都大学経済学部に入学してからでした。「経済原論」という講義で初歩的なミクロ経済学とマクロ経済学について解説が行われていましたが、ミクロ経済学は最初はまったく理解できませんでした。
みなさん、ミクロ経済学の「限界効用」や「限界代替率」「無差別曲線」って、本当に理解できましたか? 人間がそんなふうに商品の需要を決めているとは思えませんでした。 また、部分均衡論において需要曲線が右下がりになるのは分かっても、「供給曲線はなぜ右上がりになるのか?」という点にも強い違和感がありました。「たくさん生産したほうが安く作れる(規模の経済)のでは?」「需要があるなら作れるだけ作るのでは?」という疑問です。
これらに明快に答えられたら、真に優秀な経済学者です。
私にとって理解しやすかったのは、古典派の「商品の価格は原材料と賃金という費用の合計に利潤を加えて決まる」という常識的な考え方でした。マルクスの労働価値説には曖昧さ(鉛筆の労働価値の測定など)を感じていましたが、それを価格方程式として厳密にモデル化したのが、イタリア出身のピエロ・スラッファ(Piero Sraffa)でした。
スラッファは、マーシャルの部分均衡論を批判し、ひとつの市場を他に影響を与えずに切り離すことは不可能であることを見抜いていました。私は大学院において、このスラッファの体系を基礎に研究を進めました。
マクロ経済学においてケインズは政府支出による乗数効果を提唱し、実践的で明快でした。しかし近年の日本を見ると、乗数効果は著しく小さくなっています。政府支出を増やしても効果が薄い理由について、主流派は「将来への不安」といった曖昧な説明でお茶を濁しています。
さらに、貨幣市場(LM曲線)についても大きな疑問があります。アベノミクスや超低金利政策において、いくら利子率を下げても投資も消費も増えませんでした。論文執筆では細部を扱わざるを得ませんが、退職した現在、これら「乗数効果がなぜ小さくなったのか」「なぜ金融緩和が効かないのか」という根源的課題をじっくり考えていきたいと思っています。
一人当たりGDPの没落、所得格差、そして「アニマル・スピリット」の喪失。
日本経済が停滞し、世界と比較して相対的に没落していることは、誰もが実感しているはずです。実際、日本の一人当たりGDPの世界ランキングは、2001年の世界2位から、現在30位以下にまで急落しました。かつてルクセンブルクを除けば世界一を誇った国が、いまやG7最下位の「普通の国」になってしまったのです。
所得分布を見ても、所得400万円未満の低所得層の比率は1995年当時と比べて大幅に増加しており、日本は30年前より確実に貧しい層が増えています。ネット上で「中国崩壊」「ドイツ崩壊」と叫ぶ言説が溢れていますが、客観的なデータを見れば日本経済のほうがはるかに危機的状況にあります。
尊敬する経済学者・故森嶋通夫先生は『なぜ日本は成功したか』(1984年)に続き、『なぜ日本は没落するか』(1999年)を著しました。先生の予測は見事に的中しましたが、現状はその警告時よりさらに悪化しています。森嶋先生は経済システム以上に「人間」「日本人の劣化」に警鐘を鳴らしていました。
なぜ日本は停滞したのか? 私の暫定的な結論は、「日本人のハングリー精神の低下と知的知的水準の下落」、ケインズの言葉を借りれば「アニマル・スピリットの低下」です。戦後の焼け跡から復興した世代は必死でした。しかし豊かになるにつれ、現状を変革する気概を失い、「その場しのぎで生活できればいい」という保身に陥りました。
同時にこの問題は世界にも波及しています。アメリカにおけるトランプ現象、ヨーロッパの排外主義の台頭など、民主主義や市場経済そのものが揺らいでいます。人生最後の課題として、この大きな問題をブログや動画で追究し続けています。
少年期のロック体験から、大学レコーディングスタジオ構築、そして『ポピュラー音楽の社会経済学』へ。
1954年生まれの私は、ビートルズをデビューからリアルタイムで聴いた世代より少し若い世代です。病気で寝ていた時、ラジオから流れてきたレッド・ツェッペリンに激しい衝撃を受け、以来英米のロックを浴びるように聴いて育ちました。
しかし、1980年代以降のJ-Popの定着には次第に違和感を抱くようになりました。かつての日本人アーティストが抱いていた「海外に匹敵するものを作りたい」という気概が薄れ、国内市場でのみ売れればよいという内向き志向が顕著になったからです。2010年頃にはヒットチャートをAKB48とジャニーズが独占し、均一なメロディをユニゾンで歌うガラパゴス化が進んでしまいました。
対照的に徹底してグローバル市場を意識したのがK-Popでした。J-Popが海外で受け入れられにくい最大の要因は「リズム」にあります。4拍子の1拍・3拍という「オモテ拍」を強調する日本的リズムは、ブルースやジャズ、ロック、海外ポップスのバックビート(裏拍)と決定的に異なります。いくらテンションコードや複雑な転調を駆使しても、リズムの骨格が日本的であれば世界標準には届きません。
1990年代末、大学にレコーディング・スタジオをつくる機会を得て、アンプ、ドラム、Yamaha 02R、DAW(ProTools)等の機材選定から自ら行いました。さらに2000年には学生とインディーズレーベル(OSU DMF)を立ち上げました。 そこで直面したのは、ミュージシャンが生活できない旧態依然とした音楽ビジネスの搾取構造でした。この実体験から誕生したのが、学術的決定版『ポピュラー音楽の社会経済学』です。
高増 明 編(349ページ)
音楽産業の構造、サブスク、著作権、K-Pop・C-Popまで全10章で徹底解剖。
「良い声・良いギターの音の物理学的定義」「バックビート論の妥当性とリズムのため」「ロック衰退と復活の可能性」「アメリカにおけるカントリーヒットとトランプ支持」「音楽生成AIがもたらす影響」などについて、ご意見のある方はぜひご連絡ください。
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