経済学者に騙されないための経済学入門
この本のタイトルは著者のオリジナルなアイデアではありません。イギリスのケンブリッジ大学教授だったジョーン・ロビンソン(Joan
Robinson、1903-1982)という女性の経済学者は、『マルクス、マーシャル、ケインズ』(1955)というエッセイのなかで、つぎのように述べています。
The purpose of studying economics
is not to acquire a set of ready-made answers to economic
questions, but to learn how to avoid being deceived
by economists.
経済学を学ぶ目的は、経済の問題に対して一連の出来合いの答えを得るためではなく、どうしたら
経済学者に騙されないかを学ぶことである。
ジョーン・ロビンソンは、不完全競争論、経済成長論など経済学の様々な分野に大きな業績を残した経済学者ですが、ロビンソンは、それと同時に、自身が研究している経済学の「限界」を常に認識していた経済学者でした。このコメントもマルクスやマーシャル、ケインズの経済学が、それぞれ有効性をもっていることを認めながらも、その考え方に決定的な対立点や相違が存在すること、それぞれの経済学が限界をもっていることを認識してのコメントなのです。
ジョーン・ロビンソンがこのような主張をしてから、50年以上が経過しようとしています。しかし、経済学者のなかには、依然として、自分の研究している経済学を絶対視して、現実の経済に乱暴に適用しようとする人が数多くいます。この本は、その意味で、ジョーン・ロビンソンの考えていたことを現代の経済学と経済に適用することをめざしたものです。
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