国際経済学

 







 学部、大学院時代は、スラッファ経済学を基礎にして、資本理論を研究してきました。その応用として、これまでに、主流派経済学の資本理論、貿易理論の問題点を検討した論文、著書を発表してきました。以下は、その主要なものです。このうち英文論文(1)は、国際経済学のテキストに出てくる原点に対して凹になっている生産可能性フロンティアが、生産のために生産された財が必要とされ、生産に時間のかかる経済では、必ずしも凹にならないことを明らかにしたものです。また、高増の単著は、スラッファ理論に基づいて、古典派、新古典派、マルクス経済学、現代的な他部門モデル、による国際貿易論を統一的に整理し、その問題点を比較検討したものです。『国際経済学:理論と現実』は、最新の国際経済学の諸理論を現実の経済との関係のなかで、わかりやすく解説したテキストです。『経済セミナー』に発表した論文では、石原慎太郎、大前研一、唐津一といった「エコノミスト」の経済についての議論が、経済学からみて、どのように間違っているのかをやさしく説明しています。最近では、上海交通大学安泰経済管理学院のXi副教授と共同で、東アジアにおける経済統合、日本、中国などのFTA締結が各地域の経済にどのような影響を与えるのかをGTAPモデルを使ったコンピュータ・シミュレーションによって分析しています。

著書

高増明 (1991)『ネオ・リカーディアンの貿易理論:不等価交換論を超えて』創文社.

高増明・野口旭 (1997)『国際経済学:理論と現実』ナカニシヤ出版.


論文

(1)
"On the Production Possibility Frontier in a Sraffa-Leontief Economy", The Manchester School, June, 1986, pp.202-207. reprinted in John Cunningham Wood ed. Piero Sraffa: Critical Assessments, Volume III, Roudledge,London, 1995.
(2)
「貿易と国内経済への影響」、瀬地山敏編『マクロエコノミクス』第7章、昭和堂、1986年6月。
(3)
「国際貿易における不等価交換:理論的展望」『大阪産業大学論集、社会科学編』64号 1986年8月、pp.17-40。
(4)
「強いアメリカという幻想−円高のやさしい政治経済学」『思想の科学』1986年12月号、pp.24-34。
(5)
「国際貿易における不等価交換:理論的展望」国際経済学会編『国際経済』第38号、1987年8月、pp.105-114。
(6)
「生産された生産手段としての資本とヘクシャー=オリーン=サミュエルソン(HOS)モデル」『大阪産業大学論集、社会科学編』68号、1987年8月、pp.33-53。
(7)
「国際貿易と資本理論:ネオ・リカーディアンの貿易理論」京都大学経済学博士 学位授与論文、1988年7月23日。
(8)
"Export-Led Growth : A Theoretical Analysis and an Empirical Study of South Korea", Manchester University, 1989, mimeo.
(9)
「リカード比較生産費説について(1)」『大阪産業大学論集、社会科学編』79号、1990年7月、pp.1-10。
(10)
「リカード比較生産費説について(2)」『大阪産業大学論集、社会科学編』80号、1990年9月、pp.1-15。
(11)
「貿易による利潤率の上昇について:リカード命題の理論的妥当性」『大阪産業大学論集、社会科学編』、82号、1991年3月、pp.47-49。
(12)
) 「Goodwin モデルにおける財政政策の有効性について」『大阪産業大学論集、社会科学編』、90号、1993年3月、pp.87-95。
(13)
「輸出志向工業化の経済モデル:理論モデルと韓国経済の実証分析」『大阪産業大学論集、社会科学編』92号、1993年5月、pp.91-119。
(14)
「タイの経済成長と産業構造の変化」『大阪産業大学論集、社会科学編』97号、1994年9月、pp.40-65。
(15)
「先進国労働者と途上国労働者の対抗関係について:多部門モデルによる分析」、『大阪産業大学論集、社会科学編』103 号、1996 年 9 月、pp. 151-154。
(16)
「ネオ・リカーディアンと地代論、国際貿易論」『専修大学社会科学研究所月報』No.387、1995 年 9 月 20 日、pp. 31-35。
(17)
「自由貿易はすべての国に利益をもたらすか」、『経済セミナー』、1998年、pp.14-19。
(18)
「なぜ日本は貿易をするのか:『エコノミスト』にだまされないための国際経済学」、『経済セミナー』1999年6月号、pp.10-15。
(19)
「不当価交換論:貿易は不利益をもたらすか」大山道広編『国際経済理論の地平』東洋経済新報社、2001年所収。
(20) “Economic Integration in East Asia and the Possibility of Japanese Contribution”、(「アジアの経済統合と日本の役割」)国際シンポジウム『アジアの経済統合における中小企業の役割:メコン経済圏を中心に』大阪国際会議場特別会議場、2005年1月17日。
(21) “Economic Effects of FTA between ASEAN Plus Three: An Empirical Study Using GTAP model”(国際シンポジウム『中国経済と東アジア経済統合のマクロ分析』上海交通大学安泰管理学院、2007年3月27日。PDF(日本語)PDF(英語)。
(22) 「世界経済危機と東アジア経済への影響」 International Symposium on Financial Crisis and Economic Integration in East Asia Date、2009年3月21日、上海交通大学安泰経済管理学院。 PDF(日本語)PDF(英語)
(23) 「日本のジレンマ: なぜ日本は停滞から脱出できないのか?」上海交通大学安泰経済管理学院における講義、2010年11月。PDF(日本語)PDF(英語)PDF(中国語)
(24) 農業に関するTPP参加の経済効果のシミュレーション :GTAPモデルによる推計 、2011年2月14日。 より詳しい説明。 PDF(日本語)
(25) 高増 明・奚 俊芳「日本と中国の農業に関するTPP参加の経済効果のシミュレーション :GTAPモデルによる推計」。 PDF日本語
   

アナリティカル・
マルキシズム
(AM)

 

 

 G. A. Cohen、J. E. Roemer、J. Elster など欧米の新しい世代のマルクス主義者によって、既存のマルクス主義の非論理性を批判し、ゲーム理論や主流派経済学、論理学などの近代的分析トゥールの導入によって、マルクス主義を活性化、再構築しようとする学派が生み出されてきました。それがアナリティカル・マルキシズムです。その紹介と研究を目的とする「アナリティカル・マルキシズム研究会」を1996年、松井暁氏(立命館大学経済学部)と発足させました。アナリティカル・マルキシズム研究会は、その後、第1回研究会を3月23・24日に大阪産業大学で開催、以後、継続的に研究会を続け、その成果をまとめた著書を昨年出版しました。この分野についての論文としては、以下のものがあります。.

著書

高増 明・松井 暁編 『アナリティカルマルキシズム』 ナカニシヤ出版、1999年。


論文


(1)
「マルクスの基本定理について」『大阪産業大学論集、社会科学編』95号、1994年3月、pp.21-32。
(2)
「分析的マルクス主義と数理マルクス経済学:これからのマルクス経済学」、『経済セミナー』、1995 年 6 月号、pp.42-49。
(3)
「分析的マルクス主義について:マルクス経済学の可能性の中心」、『専修大学社会科学研究所月報』No.390、1995 年12 月 20 日、pp.18-24。
(4)
"Analytical Marxism and Mathematical Marxian Economics", Chulalongkorn Journal of Economics, Vol. 6, Number 3, pp.330-349, 1994.(タイ語論文)
(5)
「分析的マルクス主義の方法論」、『大阪産業大学論集、社会科学編』、103 号、1996 年 9 月、pp. 47-64。
(6)
「マルクス経済学の新しい動き」、『経済セミナー』1997年8月号、pp.48-52.
(7)
「マルクス主義の崩壊と社会科学の将来」、『神奈川大学評論』、1999年11月号、pp.79-87。
(8)
「マルクス経済学のミクロ経済学」『経済セミナー』、2000年3月号、pp.31-35。
(9)
「アナリティカル・マルキシズム」『アソシエ』第6号、2001年4月20日、pp.115-128。
(10)
「仮想経済における階級形成:J. Roemerモデルのコンピュータ・シミュレーション」『大阪産業大学経済論集』第2巻第3号、pp.11-22、2001年6月。 PDF版(80KB) 

カオスと複雑系
の経済分析

 

  最近のカオスや複雑系について研究の進展は、経済変動論や経済におけるエージェントの行動の分析にも大きく関係しています。論文(1)は、Goodwinの成長循環モデルにおいて経済政策の実行の遅れを考慮したときに、景気循環がカオス的な軌道になる可能性を示したものです。論文(2)は、在庫の調整による景気循環の可能性を多部門モデルによって検討したシュバルツのモデルをより詳細に検討した論文です。また論文(3)は、差分方程式タイプのGoodwinモデルにおけるカオスの出現を分析したものです。
 論文(4)、(5)、(6)、(7)は、エージェントの相互作用のなかで、秩序や制度がどのように形成されるのかをコンピュータ・シミュレーションで分析したものです。このうち、(4)、(5)、(6)は、繰り返し囚人のディレンマゲームを、(7)は、Roemerモデルで階級がどのように形成されるのかを検討しています。

論文

(1)
"On the Effectiveness of Fiscal Policy in the Goodwin's Growth Cycle Model", International Conference on Dynamical Systems and Chaos-Tokyo 1994, May 23-27, 1994. in N. Aoki. and K. Shiwaiwa, Y. Takahashi eds., Dynamical Systems and Chaos, Volume I: Mathematics, Engineering and Economics, World Scientific Publishing Co. Pte. Ltd. Singapore, 1995.
(2)
「Schwartz の景気循環論について」、『大阪産業大学論集、社会科学編』、101 号、1996 年 3 月。
(3)
「離散型Goodwinモデルの拡張とカオスの出現」、『大阪産業大学論集、社会科学編』、104号、1997 年 2 月、pp. 179-189。
(4)
「協調の進化:繰り返し囚人のディレンマゲームのコンピューター・シミュレーション」、『大阪産業大学論集、社会科学編』111号、1999年3月、pp.55-68。PDF版(86KB)
(5)
「繰り返し囚人のディレンマ・ゲームにおけるノイズとメモリーサイズ」、『大阪産業大学論集、社会科学編』113号、1999年6月、pp.91-103。PDF版(81KB)
(6)
「戦略の進化:繰り返し囚人のディレンマのコンピュータ・シミュレーション」『経済論叢』1999年11月、pp.100-120。
(7)
「仮想経済における階級形成:J. Roemerモデルのコンピュータ・シミュレーション」『大阪産業大学経済論集』第2巻第3号、pp.11-22、2001年6月。  PDF版(80KB) 

情報化
マルチメディア
大学発ベンチャー

 

 

  経済学の研究と並行して、マルチメディアの教育への利用、デジタルコンテンツの制作を事業内容とする大学発ベンチャーの設立などに関して、学生と共同で仕事をしています。(1)は、日本ではじめて行ったインターネット入試の説明論文です。(2)と(3)は、学生と共同で設立した大学発ベンチャーに関する報告です。

論文

(1)
「インターネット入試は大学入試を変えるか?」『人文学と情報処理』28号、2000年6月。
(2)
「文系大学ベンチャーの可能性:OSU Digital Media Factoryの設立と活動の経験を踏まえて」(山崎功詔・松本清一・中村幸彦・高増 明)2002年3月2日。
(3)
「大学にレコード会社?:OSU Digital Media Factoryの設立と活動の経験」 『マテリアルインテグレーション』2002年4月号、pp.41-45。
(4)
関西ベンチャー学会編『ベンチャー・ハンドブック』ミネルヴァ書房、2005年。  (「第5章4 情報通信分野のベンチャーとMOT」を執筆)

経済学説史
翻訳

 

学生時代から、リカード、マルクスなどの古典派経済学、ケインズに関心をもっていました。今後、論文を書いて行きたいと思っています。以下は、経済学史に関係する書評、論文、翻訳です。とくに(2)は、スラッファとケインズの関係、スラッファによる新古典派経済学の批判を学説史的にまとめたものです。

(1) 「書評 吉田雅明『ケインズ:歴史的時間から複雑系へ』」、『専修経済学論集』第 32 巻 第 2 号、1997 年 11 月、pp. 199-208.
(2) 「ピエロ・スラッファ:古典派経済学を基礎とした新古典派経済学の批判者」大森郁夫編『経済学の古典的世界2』日本経済評論社、2005年、7月14日、pp.326-372。
(3) 「第8章 宇沢弘文:社会正義を目指して闘う数理経済学者」鈴木信雄責任編集)『経済思想I 日本の経済思想2』日本経済評論社、2006年。

翻訳

(1) 森嶋通夫 『リカードの経済学』 高増 明・堂目卓生・吉田雅明訳、東洋経済新報社、1991年。

 

社会経済学

mediabook
 社会や文化が、その時代の経済とどのように関係しているのかを研究しています。まだ、研究成果はあまり発表していませんが、今後、ロックなどのポピュラー音楽、アニメーション、マンガなどと社会・経済の関係を分析した著書、論文を発表していく予定です。

(1) 斉藤日出治・高増明編『アジアのメディア文化と社会変容』ナカニシヤ出版、2008年。  (共編、「第4章 日本のインターネット文化と閉塞社会」、あとがき、を執筆)
(2) 「押井守(Mamoru Oshii)と日本のデジタル・アニメーション」国際シンポジウム『中国と日本における社会・文化・経済の変容をめぐって』天津理工大学、2004年12月20日。